野田俊作の補正項
             


「あばき療法」と「おおい療法」

2016年08月02日(火)


 ようやくシンガポールから返事が来て、ドルズィン・リンポチェの来日日程が決まった。3月14日(火)においでになって28日(火)に帰国される。その間の、3月17日(金)〜20日(祝)に4日連続セッション(『五重の道のマハームードラ』のテキストを使った前行講座になると思う)と、3月23日(木)〜26日(日)に第2の4日連続セッション(『白ターラー菩薩の灌頂と成就法』&『観音菩薩の灌頂と成就法』になると思う)をしていただく。会場は「ピアザ淡海」という琵琶湖沿いのきれいな会議室を押さえた。4日連続参加はきついと思うが、リンポチェはどうしても4日ほしいとおっしゃるので、ぜひ休暇を都合して来てください。部分参加はたぶん不可だと思う。できるだけ早く詳細を決めてお知らせします。お問合せは、アドラーギルドではなくて、日本ガルチェン協会()までお願いします。いまのところ、お問い合わせいただいても、上記のこと以上はわかっていませんが。広報用のホームページをなるべく早く開設します。

 盛岡のセッションでは、「エピソード分析」と「ブレーク・スルー・クェスチョンズ」を併用したのだが、秘書は「どちらか片一方だけではいけないのか」と言う。たしかに『パセージ』は「ブレーク・スルー・クェスチョンズ」だけでできていて、「エピソード分析」は含まれていないので、いけなくはないのだけれど、それでは充分にアドラー心理学になっていないと思う。

 西丸四方先生がおおむかしに『精神医学入門』という本を書いておられて、学生時代に教科書代わりに使ったのだが、その中に「あばき療法」と「おおい療法」という面白い言葉で、心理療法の分類をしておられる。「あばき療法」というのは、精神的な問題点を自覚させる方向の治療法のことであり、「おおい療法」というのは、自己受容や他者受容を促進する方向の治療法のことだ。アドラー心理学は、伝統的には、「あばき療法」に属する。だから「あばき」の部分がないと、アドラー心理学とは言いがたいのだ。フロイトの心理学と違って、アドラー心理学は「あばき」の一方で、盛大に「おおい」の操作をするので、そちらの方がアドラー心理学の本質だと思われやすいのだが、ほんとうはそうではなくて、みずからのライフスタイルの問題点に気づく部分がないとアドラー心理学とは言えない。

 だから「ブレーク・スルー・クェスチョンズ」だけだと、アドラー心理学とは言えない。もっとも、アドラー心理学とは言えないからといって、悪い治療法かというと、もちろんそんなことはなくて、それはそれで良い治療法だと思う。けれども、ニョクマムの入っていないベトナム料理のように、チーズの入っていないイタリア料理のように、たとえおいしくても物足りない。「エピソード分析」の苦味が入っていて、はじめてアドラー心理学らしいと、私などは感じる。もっとも、「エピソード分析」だけだと、ときに苦すぎるんだけど。